特設サイト「テクニカルライター石井英男のSamsungメモリ工場潜入レポート」を掲載しました。 │ ITGマーケティング株式会社

ITG MARKETING アイティージーマーケティング

特設サイト「テクニカルライター石井英男のSamsungメモリ工場潜入レポート」を掲載しました。

テクニカルライター石井英男のSamsungメモリ工場潜入レポート

~Samsungメモリのパフォーマンスと信頼性を支える世界最先端のノウハウに迫る!~

サムスン電子の事業領域は多岐にわたるが、大きく完成品部門と半導体部門の二つに分けることができる。完成品部門では、テレビやPC、デジカメ、スマートフォン、白物家電などを製造しており、2011年の売り上げは約900億ドルである。半導体部門では、各種メモリやシステムLSI、LEDなどを製造しており、2011年の売り上げは約600億ドルだ。半導体部門の中でも、メモリビジネスは中核となる事業であり、Samsungメモリの品質の高さは、サムスンブランドの確立に大きく貢献しているといえる。

サムスン電子のメモリ事業部門では、PCやサーバー、プレイステーション3などに搭載されるDRAM、SSDやメモリカード、デジタルカメラ、スマートフォンなどに使われるNANDフラッシュ、携帯電話やスマートフォン向けのMobile DRAMを製造しているが、これらのすべての製品分野において、世界No.1の地位をキープし続けているのだ。IDCによる調査では、2011年におけるサムスン電子の世界シェアは、DRAMが44%、SSDが50%、NANDフラッシュが41%、Mobile DRAMが64%であり、トップシェア継続年数はそれぞれ、20年、9年、10年、6年となる。IT化が進む現代社会において、サムスン電子のメモリがなければ、世界は一日たりとも回らないといっても、過言ではないだろう。

Samsungメモリの主力工場である「ファソン工場」とは

サムスン電子は、世界各国に拠点を持っているが、メモリ製品の主力工場となるのが、韓国のファソン工場である。ファソン工場は、ソウル市内から車で1時間弱のところに位置し、総面積は160万平方キロメートル、従業員数は約1万6000人という、非常にスケールの大きな工場だ。隣接するキフン工場143万平方キロメートルを加えると総面積は、東京ディズニーランドの約6倍であり、なかなか想像できない広さだ。従業員の多くは、ソウル市内などから専用バスに乗って工場へ通勤しているが、そのバスの台数は合計300台以上にもなるという。

サムスン電子のメモリ製品の主力工場である「ファソン工場」の航空写真。敷地は非常に広大である
サムスン電子のメモリ製品の主力工場である「ファソン工場」の航空写真。敷地は非常に広大である

半導体の製造工程は、シリコンウェハー上にチップを作り込む前工程と、ウェハーを切り分けてパッケージングする後工程に分けられるが、ここでは前工程を行っている。ファソン工場は、2000年に建設された新しい工場であるが、現在も拡張が続けられているほか、単に生産のみでなく、研究開発からマーケティングまでの機能を担っていることも特徴だ。ファソン工場は、サムスン電子の製造技術が結集された世界最先端の最新工場であり、Samsungメモリのパフォーマンスと信頼性はここから生まれているのだ。

現在、ファソン工場では、10、11、12、13、15、16の6つの生産ラインが稼働中であり、DRAMとNANDフラッシュを生産している。

VIP待遇で特別にファソン工場への潜入を許可される

筆者は、これまでSamsungメモリやSamsung SSDを使ってきており、その性能と信頼性の高さは身をもって実感している。是非一度、こうした高品質なメモリ製品がどうやって作られているのか見てみたいと思っていたのだが、最先端の半導体工場はトップレベルの企業秘密であり、おいそれと見に行けるものではない。しかし、9月24日にソウルで、Samsung SSDの新製品「Samsung SSD 840 PRO/840」の発表会が開催されたことに併せ、発表会に出席したIT系メディアだけに、特別にファソン工場の見学が許可されたのだ。Smasung SSD 840 PRO/840の発表会には、筆者を含めて、全世界から90名近くのIT系メディアが出席しており、このうち64名がファソン工場見学ツアーに参加した。他の参加者も、ファソン工場の見学は非常に楽しみだと語っていた。ファソン工場は、これまで一部のVIPのみしか見学を許されておらず、IT系メディアが工場内部に入るのは、今回が初めてのことだという。

ソウルからバスに揺られて1時間弱で、ファソン工場に到着した。ファソン工場内には、カメラやスマートフォンなどの撮影できる機器の持ち込みは許されておらず、スマートフォンを持ち込む場合は、カメラにシールを貼る必要があるなど、最先端技術を扱う工場だけあり、特別に許可された見学者といえども、厳しいセキュリティチェックが行われた。工場で働く社員の多くが、Samsung製のスマートフォン「Galaxy」シリーズを使っているが、そのGalaxyには専用アプリがインストールされており、工場棟に入るとカメラ機能が自動的に無効になる。また、内部で使用する紙にも特殊な仕掛けが施されており、無断で持ち出そうとしても出入時のゲートチェックにひっかかるようになっているなど、工場内の情報管理体制は非常に厳重だ。

 

工場に向かうバスの窓から撮影したファソン工場の外観。写真に写っている建物は工場のごく一部だ
工場に向かうバスの窓から撮影したファソン工場の外観。写真に写っている建物は工場のごく一部だ

なお、そういった事情なので、工場内の写真を撮影することは許されていない。ここに掲載した写真は、バスの窓から撮影した工場の外観写真を除いてサムスン電子から提供されたものである。

敷地内は緑が多く、大学のような雰囲気

ファソン工場の敷地に入って、まず驚いたのは、緑が多いことだ。手入れの行き届いた樹木や芝生の緑が鮮やかで、建物と建物の間の道路も広く、ゆったりしている。サムスン電子では、ファソン工場ではなく、「キャンパス」と呼んでいることからもわかるように、広大なキャンパスを持つ大学に近い雰囲気だ。最先端の半導体工場ということで、無機質なイメージを持っていたが、もっと暖かく心地よい印象であった。また、若い従業員や女性の従業員も多く、制服がないことも、大学のキャンパスのような華やかな雰囲気を醸し出しているのであろう。敷地が広大なため、建物から建物へ移動するためのシャトルバスも走っている。

メモリ事業の歩みがわかるショールームを見学

今回の工場見学ツアーでは、まず最初に、「NanoSpace」と名付けられたショールームに案内された。このショールームには、初期の製品から最新製品まで、メモリに関する資料が多数展示されており、サムスン電子のメモリ事業の歩みを、よく理解することができた。サムスン電子は1983年4月に64Kbit DRAMを製造したが、これは世界で3番目だったという。当時は直径4インチのウェハーが使われていたが、ウェハーサイズは時代とともに大きくなり、現在では直径12インチ(300mm)のウェハーが使われている。ショールームでは、次世代の18インチ(450mm)ウェハーが展示されていた。18インチウェハーの実用化は数年後になるという。また、次世代不揮発メモリとして期待されているPRAMに関する展示や、無事故連続記録のギネス認定証なども展示されていた。

生産ラインはほぼ無人で稼働

半導体製造ラインのイメージ写真。今回見学した場所とは異なるが、同じような雰囲気である。実際には、人はほとんどいない
半導体製造ラインのイメージ写真。今回見学した場所とは異なるが、同じような雰囲気である。実際には、人はほとんどいない
クリーンルームに入室する際は、クリーンウェアに着替え、エアシャワーを浴びてホコリを徹底的に排除する必要がある
クリーンルームに入室する際は、クリーンウェアに着替え、エアシャワーを浴びてホコリを徹底的に排除する必要がある

ショールームの見学を終えると、いよいよ工場の生産ラインの見学だ。今回、見学したのは、最新の21nmプロセスルールでNANDフラッシュを製造している12ラインである。半導体は、ごく小さなホコリがウェハーに付着するだけで、歩留まりが落ちてしまうため、高レベルのクリーンルーム内で製造される。人間は、そうしたホコリの原因となるため、ラインからはできる限り人間を減らすことが重要だ。ファソン工場の生産ラインは、ほぼ無人化されており、わずか数人で工程の管理を行っている。生産ラインは24時間フル稼働であり、従業員は3交代制の勤務となる。

もちろん、クリーンルーム内に入ることはできず、見学はガラスごしとなるが、広い工場内を天井のレールにぶら下がって移動するウェハー搬送ロボットが縦横無尽に走り回っている様子に感銘を受けた。このロボットは、日本のメーカーが製造したもので、一度に25枚のウェハーを搬送できる。

今回、見学したのは、ウェハーを酸化する拡散工程やフォトレジストをウェハー表面に塗るフォトレジスト塗布工程といった前工程の一部だが、整然かつ効率的に行われている半導体製造工程を目の当たりにして、サムスン電子のメモリやSSD製品が高いパフォーマンスと信頼性を実現している理由がよく理解できた。

カフェテリアやフィットネスセンターなど付帯設備も充実

次に、16ラインの付帯設備の見学を行った。付帯設備というのは、カフェテリアやコンビニ、フィットネスセンター、銀行窓口、カウンセリングセンター、授乳室といった、従業員のための施設である。カフェテリアはいわゆる社食であるが、雰囲気が明るく、内装もきれいなため、大学のお洒落なカフェテリアといった感じだ。ファソン工場には、他にもいくつかカフェテリアがあるが、16ラインのカフェテリアはその中でも大きく、2フロアにわたり、総面積は4900平方メートルにもなる。座席数は1300で、一日に1万1000人が利用するという。これだけの規模のカフェテリアであるから、支えるスタッフも多く、4人の栄養士と133人の調理/配膳スタッフが従事しているという。コンビニも同じ建物に入っており、一日に700人が利用する。

立派なフィットネスセンターが併設されていることにも驚いた。フィットネスセンターには、最新のフィットネス機器が揃っており、一度に93人が利用できる。一日の利用者は300人ほどになるそうだ。

このように、付帯設備が充実していることも、ファソン工場の特徴だ。これらの付帯設備があることで、従業員が心身ともに充実した状態で仕事に集中できるわけだ。こうした付帯設備が充実していることも、サムソン電子のメモリ事業が世界No.1の地位を独占し続けている理由なのであろう。

16ラインのカフェテリア。清潔で明るい雰囲気だ。2フロアにわたっており、総面積は4900平方メートルと広い
16ラインのカフェテリア。清潔で明るい雰囲気だ。2フロアにわたっており、総面積は4900平方メートルと広い
コンビニの「Spot Mart」も同じ建物に入っている。広さはそれほどではないが、外に出ずにコンビニに行けるのは便利だ
コンビニの「Spot Mart」も同じ建物に入っている。広さはそれほどではないが、外に出ずにコンビニに行けるのは便利だ
フィットネスセンターも立派だ。面積は820平方メートルで、一度に93人が利用できる
フィットネスセンターも立派だ。面積は820平方メートルで、一度に93人が利用できる

サムスン電子のグローバルブランド広報館「SAMSUNG d’light」を見学

ファソン工場見学を終えた後、筆者を含むIT系メディア一行は、ソウル市内にあるサムスン電子本社ビルに向かった。目的は、本社ビルに併設されているグローバルブランド広報館「SAMSUNG d’light」の見学だ。SAMSUNG d’lightは、地上1階から地上2階までの3フロア、2700平方メートルの規模を誇り、サムスン電子の製品の展示だけでなく、最新デジタル技術を通じて新たなライフスタイルを体験できる施設だ。

1階は、「MOBILE PLAZA」と呼ばれるフロアで、テレビやPC、スマートフォンなど、サムスン電子の最新製品を利用して、コンテンツを自由に創りながら楽しむことができるほか、サムスン電子の環境対策やエコへの取り組みに関する展示もある。2階は、「GLOBAL GALLERY」と呼ばれるフロアで、サムスン電子の歴史や新しいビジョン、次世代製品などが展示されている。ここには、液晶や半導体の製造に関する展示もあり、なかなか興味深かった。地下1階は、フラッグシップショップとなっており、サムスン電子の最新IT製品やモバイル製品、アクセサリーなどが展示・販売されている。また、地下1階は、ソウル地下鉄2号線の「カンナム」駅の地下街とも直結しており、多くの人で賑わっていた。

ソウル市内にあるサムスン電子本社ビル。大きな高層ビルである
ソウル市内にあるサムスン電子本社ビル。大きな高層ビルである
サムスン電子本社ビルの看板
サムスン電子本社ビルの看板
グローバルブランド広報館「SAMSUNG d'light」の入り口
グローバルブランド広報館「SAMSUNG d’light」の入り口
1階には、テレビやPCなど、サムスン電子の最新製品が展示されており、自由に触れることができる
1階には、テレビやPCなど、サムスン電子の最新製品が展示されており、自由に触れることができる
2階には、液晶の製造工程に関する展示がある
2階には、液晶の製造工程に関する展示がある
シリコンウェハーの元となる、シリコンインゴット。インゴットを薄く切って、ウェハーを製造する
シリコンウェハーの元となる、シリコンインゴット。インゴットを薄く切って、ウェハーを製造する
スマートフォンなどと連携する次世代白物家電も展示されている
スマートフォンなどと連携する次世代白物家電も展示されている
地下1階は、フラッグシップショップとなっており、サムスン電子のモバイル製品やPC、アクセサリーなどを購入できる
地下1階は、フラッグシップショップとなっており、サムスン電子のモバイル製品やPC、アクセサリーなどを購入できる

最後にPC房「LION PC」を訪問

ビルの2Fに入っているPC房「LION PC」。LION PCは、大手のPC房チェーンであり、多くの店舗を展開している
ビルの2Fに入っているPC房「LION PC」。LION PCは、大手のPC房チェーンであり、多くの店舗を展開している

最後に訪れたのが、PC房「LION PC」である。PC房(PCバンと発音する)は、いわゆるインターネットカフェだが、韓国ではオンラインゲームをプレイするために、PC房を利用する人が多が多く、韓国にはこのようなPC房が1万7000店もあるそうだ。

LION PCは、韓国のPC房チェーンの中でも大手だが、PCにSamsungの高性能SSDを搭載することで、他のPC房との差別化を図っていることが特徴だ。SSD搭載PCは、HDD搭載PCに比べて、ファイルアクセスが遙かに高速なので、ゲームの起動にかかる時間や移動時のデータ読み込みのタイムラグが大幅に短縮され、非常に快適にプレイできることが利点である。LION PCが入っているビルの外壁や入り口にも、Samsung SSDを搭載していることを示す横断幕やポスターなどが貼られていたことが、印象に残った。LION PC経営者の方に話を伺ったところ、Samsung SSDを搭載したPCは、ゲームをより快適にプレイできるとして、利用者の評判も非常によいとのことだ。

LION PCは、PCに高性能なSamsung SSDを搭載していることがウリであり、ビルの壁にもSamsung SSD搭載をアピールする横断幕が貼られている
LION PCは、PCに高性能なSamsung SSDを搭載していることがウリであり、ビルの壁にもSamsung SSD搭載をアピールする横断幕が貼られている
ビルの入り口にも、Samsung SSDを搭載しているというポスターが貼られており、ファイルアクセスが高速で、快適にゲームをプレイできると謳っている
ビルの入り口にも、Samsung SSDを搭載しているというポスターが貼られており、ファイルアクセスが高速で、快適にゲームをプレイできると謳っている
LION PCの店内。この店舗では、喫煙スペースと禁煙スペースに分かれて、合計60台のPCが設置されているが、そのすべてにSamsung SSD 830が搭載されている
LION PCの店内。この店舗では、喫煙スペースと禁煙スペースに分かれて、合計60台のPCが設置されているが、そのすべてにSamsung SSD 830が搭載されている

サムスン電子の凄さを実感した貴重な体験

今回の工場見学ツアーでは、世界トップシェアを誇るサムスン電子の半導体製造現場の一端に触れることができ、筆者にとっても非常に貴重な体験となった。グローバルブランド広報館「SAMSUNG d’light」では、日本では販売されていないサムスン電子の製品や、環境に対する取り組みを知ることができ、サムスン電子の凄さを肌で感じた一日となった。サムスン電子は、業界のトレンドリーダーとしての地位を確立しており、今後もその動向に注目していきたい。

 

 

 

関連情報